『ANT』TISCH Solo Exhibition | 色んな世界・色んな正義

TISCHさんの初めての個展に行ってきた。
失礼ながら、もともと彼を知っていたわけではなく
稲垣貴子さんのストーリーズでたまたまお見かけして今回の個展を知ったのが経緯。

在廊されている時間に行くのは緊張したが、とても柔らかく凛とした空気を纏った方で、
作品や個展に関してのさまざまな想いを語ってくださった。

そして、本人から直接話を聞くことで、
作家さんの意図や捉えている世界がひしひしと伝わってくるような、とてもいい時間だった。

 TISCH さん / Photographer

 多くのモデル・女優・アーティストを手掛けるフォトグラファー。

 写真のみならず動画も撮影されていて、日本やパリでご活躍されているそう。

 ステキな写真たちや彼の哲学はInstagramから。

 

個展のテーマは「ANT」。
蟻が実際に絵や作品に関連するものもあるが、作品に描かれている人間たちが
まるで蟻のように右往左往しているようすをタイトルにしたらしい。
個展全体が一つの物語になっていると話されていて、
一つ一つの作品が独立しておらず繋がりを持って並べられているギャラリー空間が面白かった。

描かれているのは「鉱物になりたい人」たち。

『女性は自然への感性がより鋭く、強さや美しさ・永遠の象徴として鉱物になりたいと思っているストーリー』と、
TISCHさんならではの捉え方が光っていた。
TISCHさんの描く女性はどれもかっこいいのに、そんなストーリーを聞くと、
その女性達はすごく悩み、鉱物になれない自分を憂いているように見えた。

現実世界でも、クールで強く生きているように見える人も
見えていないところで何かと葛藤しているのかもしれないと考えると、
人間はいくつになっても弱い生き物なんだなと思った。

ストーリー全体からそれぞれの絵に視点を移して近くで見てみると、憂いているような表情も含め、
フォトグラファーならではの光や影・色の感じ取り方が表れた細部はとても美しかった。

さらに、絵の中だけでなく、空間としての光との調和も素晴らしかった。
ちょうど日が沈む時間帯のギャラリーに差し込んだ光が
絵やオブジェに重なるのはなんともステキだった。

今回の絵やオブジェは、「機械と人間」をテーマにした写真集からインスピレーションを得たらしい。
1968年は機械化が一気に進んだ年でもあるらしく、
その熱狂を鉱物に向かわせた、現実とは異なる分岐した世界がこの物語の舞台になっているとのこと。

鉱物への憧れと情熱を持つ人々は「現実ではあり得ないこと」で終わらせずに、
それを正義だと認識している世界はどうなっていて、そこにいる人たちにはどのように見えているのか。

そこには正解も不正解もないわけで、考えを巡らすのは楽しいし、
自分なりのやり方でそれを表現するのはかっこよく、自由だと思った。



そして、あることがきっかけで、これまでの世界とはガラリと変わってしまうことは現実でも起こりうることで、
そのようにして創られる分岐した世界はファンタジーや特別でなく、
ある意味普遍的なのかもしれない。。

フォトグラファーの方の個展なのでファッション性のある内容かと思いきや、
深い探究心のある哲学のような訴えがあるように感じた。





次回の個展も考えられているようなので、次なるお知らせが楽しみ。

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